歌一洋「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」(大阪香川県人会雑誌「大好きさぬき」vol4=2011年1月15日発行B>



            建築家、歌一洋・近畿大学教授(四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト提唱者
              
              
                       

                  

 先日、香川県でのことです。菅がさに白装束のおへんろさんが緑の山を背に歩いている。そこに、「おへんろさん、お接待です」と畑から女性がミカンを差し出していました。「ありがとう」とおへんろさん。世界中で四国ならではのこころ温まる美しい風景です。
 私は徳島県海陽町に生まれ育ち、子どものころには、おへんろさんにお米などお接待をしていました。その後、大阪で建築事務所を開設し、外国旅行をするたびに、四国の遍路文化の大切さを思うようになりました。二十年余り前のこと。その後、ますます歩き遍路への意識は高まっていました。
 時を経て今、私のお接待はカタチを変え、おへんろさんが休憩、仮眠する小屋を造るプロジェクトを進めています。遍路道1,400kmに89棟の小屋を地域の人々とボランティアで建設する計画です。2001年に1棟目が完成し、現在41棟完成しました。今後も残り48棟の完成の小屋の完成を目指します。
 祈りの心。人と人、人との自然との触れ合いの精神を持つ遍路文化の継承、広がりの一助になることを願って……。

 

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